民事訴訟では,当事者が代理人をつけずに自分で訴訟遂行すること(いわゆる「本人訴訟」)も法律上可能です。
ただ,私は,民事訴訟の当事者になる方には,「とりあえず弁護士に相談すること」を強くおすすめいたします。以下,理由を説明します。
1 弁護士費用を知る
弁護士費用は,事件の種類・内容によってまちまちですし,同じ事件でも弁護士によって費用は異なります。そもそも,費用感がつかめないことには,弁護士に頼んだ方が良いのかどうか,判断が難しいと思います。
ですから,まずは弁護士に相談して,どれくらいの費用がかかるのかを確認してみることをおすすめします。弁護士の提示額に不満があれば,別の弁護士に相談して「相見積もり」を取ってみることも考えられます。
2 本人訴訟のリスク
手前味噌で恐縮ですが,訴訟はやはり弁護士に任せるのが安心・安全です。
本人訴訟には,以下のようなリスクがあります。
① 言いたいことが裁判官にきちんと伝わらないリスク
民事訴訟では,自分の言い分は書面にして,裁判所に提出しなければなりません。書面に書かれていないことは,「主張していない」という扱いになります。また,書面に書いていたとしても,裁判官に理解してもらえなければ「主張してない」のと同じです。
法律の専門家でない方が法的な書面を書くと,「法的に重要な事実」と「重要度の低い事情」が渾然一体となりがちで,このような書面では,言いたいことが裁判官にきちんと伝わらないリスク(≒敗訴リスク)があります。
② 重要なポイントに気付かないリスク
次に,勝敗を分ける決定的なポイントに気付かない,というリスクもあります。
例えば,貸金返還請求訴訟において,最終弁済から長期間が経過しているような場合,借主には「消滅時効」の抗弁が認められる可能性があります。消滅時効成立の要件を満たしている場合,「消滅時効を援用します」と主張さえすれば,消滅時効の抗弁が認められ,借主は勝訴できます。
しかし,法律の専門家でない方は,こういう主張が出来ること自体に気付かず,勝ち試合をみすみす落としてしまうリスクがあります。
③ 裁判に時間を取られるリスク
自力で訴訟対応すると,書面作成及びそのための調査・準備にかなりの時間を取られることになります。
また,裁判期日は平日の10~17時に行われるため,お仕事をされている方はお仕事を休む必要があります。
さらに,裁判期日は月1回のペースで行われますが,裁判期日が複数回に渡り,裁判が終わるまでに何か月もかかることもざらです。
3 結び
このように,本人訴訟は,弁護士費用を節約できる反面,結構な手間暇がかかりますし,敗訴の危険性も高くなります。
ですので,まずは弁護士に相談して,
■事案の見通し(勝ち負けの可能性はどれくらいか,勝った場合・
負けた場合にどうなるのか)
■訴訟の困難さ(本人訴訟で対応できるものかどうか)
■裁判が終わるまでにかかる時間
■弁護士費用
等を把握した上で,最終的には費用対効果の観点から,自分で対応した方がよいのか・弁護士に任せた方がよいのか,をご検討いただくのが良いと思います。
また,他の弁護士にセカンド・オピニオンを求めることも考えられます。
いずれにしても,まずは弁護士に相談してみて下さい。損はしないと思います。